痩せも肥満も栄養失調が原因、肥満になるもうひとつの栄養失調について

肥満もやせもどちらも現代の栄養失調

「栄養失調」という言葉を聞いて、まず何を思い浮かべるでしょうか? 多くの人は、難民の子供たちがガリガリにやせている姿を思い浮かべるのではないでしょうか。この難民タイプの栄養失調は、カロリーである3大栄養素(炭水化物、蛋白質、脂肪) と、それを体内で吸収し効率的に利用、貯蔵、排泄に至るまでの、すべてをコントロールするのに不可欠な副栄養素(ビタミン、ミネラル、食物繊維など) の両方が不足して起こります。

このカロリーと、それを代謝するために必要な副栄養素の摂取バランスが、私たちの体にさまざまな変化をもたらしているのです。

カロリーの消費(代謝)には、大きく分けて2つの代謝を考えなければなりません。1つは「新陳代謝(基礎代謝と同じ意味)」、もう1つが「エネルギー代謝(運動誘発性のものと食事誘発性のものがある)」です。これらは、どちらも私たちの意思によりある程度コントロールできることが分かってきました。

「ダイエットとは人の生活をより豊かにするために」代謝を自分自身でコントロールすること、つまり意識して実践することをいいます。では何を意識すればいいのでしょうか?
それを知ることが最も大切なことになるので、ここではカロリーと副栄養素のアンバランスから起こるさまざまな栄養失調を、運動の有無により「代謝がどのように行われ」「どのような体型がもたらされるのか」を簡単にシュミレーションしてみたいと思います。

カロリー過多、副栄養素過多の場合

運動によりカロリーをエネルギーに変える際、使用するカロリーに見合った量の副栄養素が必要となる。このケースは運動すればするほど、Aは増えBは減少し、肥満を避けることができる(相対的肥満)。つまり1の場合、運動するかしないかが肥満の有無を決定する。

カロリー過多、副栄養素不足の場合

運動しようにも、カロリーと副栄養素のそろっている所までしかエネルギーに変えることはできないので、Cのラインまでしか運動はできない。たとえCのラインまで運動したとしても、D-A=B の分は必ず肥満となる(絶対的肥満)。つまりⅡの一合、副栄養素の摂取量と運動量が肥満度を左右する。

Ⅰ「カロリー過多」「副栄養素過多」の場合(完全栄養過剰)

カロリーに見合った運動をすれば問題ありません。運動不足の場合は、カロリーと副栄養素と共に使い切れず、両方とも余ってしまいます。そして余剰カロリーは蓄えられ、肥満となります。>>>相対的肥満

Ⅱ「カロリー過多」「副栄養素不足」の場合(現代版栄養失調)

いくら運動してカロリーを使おうとしても、副栄養素が不足しているために副栄養素の分までしかカロリーは消費できません。そのためカロリーは余り、肥満になります。また運動が不足した場合も、当然カロリーは余るので肥満になります。>>>絶対的肥満

Ⅲ「カロリー不足」「副栄養素過多」の場合

無理に運動をすればカロリーはすぐに使い果たされ、体に蓄えられているエネルギーを使うことになります。しかし、その使われる優位順位はブドウ糖、たんぱく質、脂肪の順なので骨や筋肉から落ちてしまいます。骨や筋肉が代謝されている間、脂肪はそのままなので一過性の隠れ肥満になり、その後で完全なやせに陥ります。運動をしない場合もスピードはゆっくりですが、最終的には同じです。

Ⅳ 「カロリー不足」「副栄養素不足」の場合(難民型完全栄養失調)

Ⅲの状態が急激に起こります。これを飢餓とも呼び、死の可能性が高いといえます。

以上の4タイプから、栄養失調にはカロリーが不足する飢餓型栄養失調と、カロリーは摂れていても副栄養素が不足するニュータイプの栄養失調があることが分かります。

このニュータイプの栄養失調は、いくら運動しようにも副栄養素が不足しているために、副栄養素のそろっているところまでしかカロリーをエネルギーに変えられません。
そのためにカロリーが必ず余り、肥満を確実に招いてしまうのです。このメカニズムを知らずにダイエットをすると、例え見た目がスリムになり体重が落ちても、骨や筋肉が減るばかりで体脂肪率は急増し、脂肪だらけの最悪の肉体になってしまいます。そして、ゆくゆくは多くの病気を招くことになるのです。
このカロリーと副栄養素の相関関係を理解したうえで自分の食生活を振り返ってみてください。あなたの食生活はファストフードやレトルト食品、コンビニ弁当、外食などの、現代を代表する加工食品が主になつてはいないでしょうか。
これらの中には、ジャンクフードと呼ばれる、カロリー過多で副栄養素が欠乏した食品類が数多くあります。これらを食べ合わせていると、間違いなくニュータイプの栄養失調により肥満になってしまうのです。
しかし、いくらカロリー過多で副栄養素が不足していても、代謝の末の余剰カロリーを捨てることができれば問題はありません。というのは、このニュータイプの栄養失調による肥満は、人類の過去の食歴が大いに関与しているのです。

人類は400万年前の誕生以来、その大半を飢餓との戦いの中で何とか生き永らえてきました。そのため肉体そのものが飢餓という環境にのみ順応できるように代謝システムを整え、準備するようにななってしまったのです。
つまり、いつ飢餓になっても大丈夫なように、余剰カロリーを体内に貯蔵する代謝システムを持っているために太るのです。
余っていらないカロリーを捨てることができれば、肥満とは無縁であったはずです。ここ数年の問に日本人をとりまく食環境は一変し、世界の先進国同様に欧米食の導入による飽食という新しい環境にさらされるようになりました。
さらに追い討ちをかけるように分かってきたことがあります。
それは日本人が遺伝的に太りやすく痩せづらいという事実です。これは逆にいうと飢餓に順応できる人の数が多いとも考えられますが、飽食の現代ではあだとなり、肥満する人口が増えやすいといえるのです。このことからも現在の日本人は、よりダイエットが必要な民族であるともいえるのです。

しかし心配はいりません。なぜなら遺伝というものは、どんな疾患でも必ず発現するものではなく、周辺環境や栄養が良ければ発症せずに人生を全うすることができるからです。私たち自身の手で肥満を防ぐことはできるのです。それにはまず、己を良く知り、現状を正確に分析してから対策を立てなければならないのです

最後に、食事で摂るカロリーと副栄養素を車に例えると、それぞれガソリン、エンジンオイルに匹敵します。革はガソリンとエンジンオイルを混合し、プラグで着火することにより動力を生み出すが、それと同じように人の休も、カロリーとそれに見合った副栄養素を使って化学反応を利用しATPというエネルギーを作り出し体を動かしている。
基礎代謝量とは、アイドリングの際使われるガソリンの量である。
車の場合、一連の動力発生システムは、電気系統及びコンピューターが制御している。しかし私たち人間の体はさまざまなホルモンが血液を介し、これと同じようなエネルギー代謝システムをコントロールしている。
車も人も共通なのは、人の意志がなければ動かないということ。どこに行くか、どの位のスピードで走るのかなど、すべては自分たちの意思(メンタル) によって決定されるのです。

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